水彩画の技法12!筆でできることのすべて
水彩絵の具は、日本人には特に親しみのある画材ですね。
それは誰もが、小学校のときから
使っている画材だからです。
水彩絵の具は、子供にもでも扱える、
さほど難しくない画材。
しかし、扱い方によっては
とても美しい表現ができたり、
プロの画家が描くと、あっと言わせるような
効果をもたらしたりと
奥が深く、実は色々なテクニックがあります。
今回はその中でも
紙と筆だけで出来る方法をご紹介します。
水彩画らしい雰囲気を、楽しむ作品が描きたい。
プロの画家は、どんなことをしているのか知りたい。
そんな方は、水彩の基本テクニックを知り、理解しておくだけで
水彩をもっともっと楽しめて、
また作品があか抜けてくること間違いなしです。
Contents
水彩画の技法① 【ウェットブラシ】
このやり方は、あまり一般的な名前がないので
「ドライブラシ」の逆で、とりあえずタイトルは
「ウェットブラシ」としました。
筆にたっぷりの絵の具を含ませて、
紙に乗せるように描く方法です。
これぞ水彩画の楽しみというか、
水彩でしかできないやり方であり、
みずみずしい絵の具を十分に楽しめる技法です。
上の写真は、「にじみ」なども混じっていますが、
おおよそのイメージは
つかめるのではと思います。
水彩画の技法② 【ウォッシュ】
例えば背景や空の色など、広い面積をたっぷりの薄い絵の具で塗る
といったやり方を、水彩用語では「ウォッシュ」といいます。
コツは、使う色をはじめにたっぷりと溶いておくこと。
後から色を足すと、濃さや色合いにムラができてしまいます。
水彩画の技法③ 【グラデーションウォッシュ】
ウォッシュに色の濃さの違いをもたせて、グラデーションをつくります。
初めに紙に水を引き、
濃い色を乗せるところからスタート
だんだん薄い色を乗せるようにし、
なじませながらグラデーションをつくります。
刷毛を使うと、ムラのないグラデーションが
つくりやすいでしょう。
水彩画の技法④ 【ドライブラシ】
水を少なめにして絵の具を溶き、
かすれさせるように描きます。
ちょっとクールな表情が出せますね。
この作品では、紺色をにじませた海面の上に
白く濃い絵の具のドライブラシで
光を表現をしています。
水彩画の技法⑤ 【にじみ(ウェット・オン・ウェット)】
はじめに紙に水を引いて、
その上に、また水たっぷりで溶いた絵の具をのせます。
絵の具がじんわりとにじんで、やさしい雰囲気に。
偶然性もいかす技法ですので、
どこまでにじみ広がるか、
乾くとどうなるか
楽しみに待ってください。
慣れてくると、ある程度コントロールもできるようになります。
水彩画の技法⑥ 【上から水を垂らす】
この作品も、色々なテクニックが使われていますが、
注目はクジラのしっぽの真上ギリギリ、
そして海面右側の上の空の部分に表れている、
モヤモヤッとした模様(笑)のことです。
これは一般的には、ウェット オン ウェットの
一部とされることも多いやり方ですが、
私は個人的に好きだし
知っておくととても便利なので
項目を分けてみました。
「ウェット オン ウェット」の、にじませる塗り方の中で
絵の具を塗った(垂らした)部分が半乾き状態になったら、水を置く。
すると、後から垂らした水が、前の絵の具を押していく
という効果を出します。
コツは、初めの色よりも
後に垂らす色の水分量が多ければいいので、
必ずしも水を垂らすのでなく
溶いた絵の具の中の、水と絵の具の分量差で、
この模様が出るのです。
水彩画の技法⑦ 【ぼかし】
先に塗った絵の具を、
水をたっぷり含ませた筆で
ぼかしていきます。
「にじみ」よりも、少し計画的にやるイメージです。
この絵でいうと、左側の髪の毛は
黒を先に置いて、それをぼかして薄く表現しています。
水彩画の技法⑧ 【重色(ウェット・オン・ドライ)】
下の色が乾いて(ドライ)から、
その上に透けるような絵の具(ウェット)を乗せます。
絵の具が重なったところは、
美しい色の重なりになります。
水彩画の技法⑨ 【引っ張る】
濃く引いた絵の具を、
水を含ませた筆で引っぱるように伸ばします。
部分的なグラデーションに。
水彩画の技法⑩ 【洗う】
先に書いた「ウォッシュ」と言葉が混同しそうですが、
こちらは実質的に「洗う」やり方です。
一度塗った絵の具を
水を含ませた筆でこすり、
部分的に色を落とすのです。
絵の具が乾いていても、濡れていてもできて、
それぞれに少し違った効果をもたらします。
この写真では、右側が洗った場所、
左側に、細く洗った筋が入っています。
紙がある程度の質のあるものでないと、
何度もやると表面が毛羽立ったり、汚くなってしまうので
ご注意を。
水彩画の技法⑪ 【スパッタリング】
絵の具にたっぷりの絵の具を溶き、
紙に散らします。
散らし具合が、筆の種類や
絵の具の量、濃さなどによって変わってくるので、
要らない紙で少し試してから
本紙にうつるのがいいでしょう。
散らし方は、筆を反対の指などに当てる方法や
コシのある筆なら、筆先を指ではじいても
うまくいく場合があります。
水彩画の技法⑫ 【流す】
重力を利用し、絵の具を流す方法があります。
水の多い絵の具をたっぷりと塗ったら、
紙を縦にして、絵の具を自然に流してみましょう。
これも、
絵の具の上から水を垂らして流す
紙を傾ける角度や時間を変える
絵の具や水の濃さを変える
などの工夫で、色々な表情が出ます。
最後に
今回は、水彩画の技法の中でも
筆で出来ることをご紹介しました。
このやり方を同じように真似しても、
紙の種類 絵の具の濃さ 水の量
色々な条件で、様々な表情が出せるところが
水彩画の魅力でもあるのです。
ぜひ、紙・水・絵の具を楽しみながら、
水彩画に取り組みましょう!