こどもの絵の発達【いつから?どんな意味?描かない子もいる?】
こどもの絵の発達について
子供の絵について、これってどんな意味なんだろう? と疑問に思ったことはありませんか。
子供にとって、絵を描くということは、とても自然な行為です。
そして、子供の絵は、子供の欲求のままに、変化していきます。
この記事では、筆者が美術教育を専門とし、現場に10年携わった経験から、
子供の絵がどのように発達し、それぞれの段階でどのような意味をもつのかについてまとめています。
このような記事を読むときに、気を付けていただきたいのは
「〇歳であれば、これくらいのことはできるはず」
といった基準にするために読まないで欲しい、ということです。
その子が自然に描いたものを見て、「これはこういう段階なんだな」「こんな意味があるのかな」と
理解するために、活用していただきたいと思っています。
もし、その子にとって早すぎる段階で「こんな風に描きなさい」を強いてしまうと、
その子は自信を失ってしまうでしょう。
自然に、絵が移行していくのを待ちましょう。
特に幼児期の絵は、「こう描きたい」という主観で描くものです。
そして、その段階を過ぎると、決して前戻りはできません。
その時期にしかできないお絵描きを、見守って、応援してあげたいものです。
Contents
ローウェンフェルドの分類
子供の絵の発達段階には様々な説がありますが、
アメリカの美術教育者、ローウェンフェルドによる分類が有名です。
ローウェンフェルドは、「幼児の絵の発達の順番(発達段階)は万国共通」という結果を見出しました。
これは、とてもおもしろい結果だと思いませんか。
子供の絵は、人間にとってとても自然な行為ということにもなりますね。
私が我が子や、現場で見てきても大体合致するな、という印象です。
以下、その分類を下敷きに、他の分析、自分の経験も交えて
こどもの絵の発達についてまとめてみました。
こどもの絵の段階
こどもの絵① なぐりがき(スクリブル)(2~4歳)
子供がクレヨンなど描画材を持てるようになると、
紙に、ぐるぐると線を描いたり、クレヨンをたたきつけて、
点のような跡がついたりといったことをします。
体全体を使って活動し、腕が動くことによる、弧のような線など、
自分の動きによって線や点の跡が付く、といったことに興味をもちます。
こどもの絵② 線や、丸を描けるように
なぐりがきに加え、
「ここで線を止める」「線と線をつなげる」といった、
線をコントロールをしようとする意志が出てくる。
また、視覚と手の動きが連動するようになり、線や丸を描けるようになります。
丸がかけるというのは子供自身にとってもちょっとした驚きであるらしいのです。
我が子も自慢げに、丸をいくつも描くときがありました。
こどもの絵③ 象徴期(3~4歳)
【形の発見、意味づけ】
丸、三角、四角などを画面の色々なところに描き、そこに「これはおかあさん」などと意味づけをしていきます。
「何を描こう」と考えて描くのではなく、描いてみたものに意味をつけています。
こどもの絵④ 図式前期(カタログ期)(4~7歳)
形がはっきりとしてきて、「これを描こう」と思って描いたということが明白です。
この場合、一つ一つの絵の間には関わりがなく、ちょうどカタログに
物が並べられている様子と似ているので、「カタログ期」と名付けられています。
一つ一つのものの描き方としては、
「物にとらえやすい単純な形とルールを見つけ出す」と言われることが始まります。
家は、四角の上に三角の屋根がある、といったことが分かりやすい例です。
「頭足人」
この時期に有名な、顔に直接手足がついている人「頭足人」が登場することもあります。
子供は顔を中心にして他者を認識しているのですね。
こどもの絵⑤ 図式期(7~9歳)
「場面」「関係」を描く
それまでは個々のものを並べて描いているにすぎない絵の画面に、2つ以上のものの「関連」が出てきます。
「基底線」
画面の中に、地面の線が登場します。空にも、空はここまで、といった線が描かれることもあります。
「展開図描法」
景色などを、展開図を見るように、俯瞰した視点にいるように描くこともあります。
「レントゲン描法」
バスや建物の中などを、レントゲンのように、中身が透過して見えるように描く。
「部分的解決」
これも、子供の絵にみられる楽しい描き方です。
ななめの屋根の上に煙突をまっすぐ立てて描くので、画面の中で煙突はななめに見える、
といったことがよく起こります。
こどもの絵⑥ 初期写実の時期(9歳~11歳ころから)
客観性が増えてきて、見えるように描きたいという欲求が出てきます。
大小の関係もより明白に。
「ものの重なり」を描く子も。
それまでは、横や縦に並べるだけだった形を、重ねて描くことで、「後ろにあるもの」などを表現できるようになる。
前段階までの描き方(その子による段階は様々。
ますます、年齢によってひとくくりにはできない)に加えて、
プロの漫画家や、イラストレーターが描いたような絵を参考に、
線やタッチを工夫するなど、「大人の絵」に近づけたい子もでてくる。
こどもの絵⑦ 11歳~13歳ころから
奥行きなど
を意識できるようになる。
他者の絵などを客観的に見る目がつくことで、こんな風に描きたいというイメージがわき、
だんだんと「技」を取り入れていく。
例えば
遠くのものを小さく描く「大小遠近法」
道が奥に行くと細くなる「一点透視法」
遠くのものの色を薄く塗る「空気遠近法」
これらのやり方は、自発的に思いつくというよりは、他のすぐれた表現を見て、
「あ、遠くのものは小さく描くといいんだ!」と気づき、そのよさを理解して、
「自分もやってみよう」と思えることが多いのですね。
また、再現的な表現だけでなく、
デザインや構成的なことも楽しめるようになります。
絵を描かない子って、どうなの?
絵描きである筆者の子供は、なんとあまり絵を描かない子供です。
どちらかというとブロックや、体を動かすほうが好きでしたので、
自発的には描かない時期も長かった。
(保育の場などでは、友達と一緒には描いていたよう。時間がかかりますが)
ですから、それぞれの段階の絵を、
母の前では1回ないし数回しか描きませんでした。
また、絵の発達も、上に書いたような
「一般的な発達段階」と照らし合わせると
どちらかというと遅めでした。
クレヨン、絵の具、ペンなど様々な画材と出会わせてきたにも関わらず、
それらへの興味もイマイチ・・・
時々ちらっと描くものの、大きさは小さめ、すぐやめてしまう。
この傾向は、1,2歳のころからみられました。
私としては、我が子がどんな絵を描くのか見たかったですし
仕事柄興味も大きかったので、これはかなり残念なことでしたが、
何とかその気持ちを抑え、
・クレヨンなどは常に身近に。加えて、新たな画材と時々出会わせる。
・友達とやってみる。
・描きたくない素振りを見せたら、強くは勧めない。
・描いたときには絵の話を聞くようにし、褒める!
といった対応を心がけていました。
小学生低学年になり、未だに自分からはあまり描きませんが、
いちおう自分なりには「絵が苦手、好きではない」
などどといった認識はもっていないようです。
数少ない、描いた絵は大事に保管したり、飾っていたりするので、
「母は自分の絵を大事にしている」という意識もありそうです。
他の子を見渡してみれば、
「お絵描きはずっとするけれど、外遊びはあまり好きではない」
「文字に興味がない」
など、色々な子供がいることが分かります。
しかし我が子となると、ついつい「何でもまんべんなく出来てほしい」
といった気持ちになりがちで、
私としては子供がお絵描きをあまりしないことが、気になっていました。
しかし、全ての分野に偏りのない子供などいません。
我が子の場合、ブロックなど、他にずっと好きなことがあるので、
それを思いっきりやらせてあげて、それを認め、自信をつけてあげる。
絵も全く描かない訳ではないのですから、上に書いたような、
「画材と出会わせる」「絵の話をきく」「友達と」
といったことは時々し続ける。
これで十分かなと思うようにしています。
- 子供の「やりたい」気持ち
- 「自分は大切にされている」を感じられること(愛情を子供が感じられる)
- 自信をつけていく
これらを最優先に、特に小さいころの育児は、気持ちをゆったり構えていきたいものです。
より専門的に知りたい方は
また、より専門的に、多くの例を載せて解説している資料↓があります。
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「日本文教出版」という教科書会社からの資料です。
https://www.nichibun-g.co.jp/data/education/e-other/e-book/e-other19_kodomo/HTML5/sd.html#/page/1